塾に着くと、すでに数人の塾生が集まっていた。
「おはよう、夕霧さん」
講義室に入ると、みんながあちこちから声をかけてくれる。
「おはようございます」
笑顔で言葉を返していた時、背中に冷たい視線を感じた。
視線の先には背の高い色白の青年。
何も言わず、無言でこちらを睨み付けている。
鋭い瞳からはこちらに対する明らかな嫌悪が感じられる。
またか……、と思って軽くため息をつく。
――久坂玄瑞。
彼もまたこの松下村塾の塾生。
十四歳で家族を失くし、今は藩医である久坂家の当主。
秀才と評判で、私も名前は以前から聞いていた。
彼もここの塾生だと聞いて、話すのを楽しみにしていたのに。
それなのに、何故か会ったその時から彼は敵意むき出しだった。
