塾の中は思っていたよりも狭かった。

開けたままになっている襖から、何人もの塾生が集まっているのが目に入る。

あれだけ勢い良く駆けてきたので私達が来るのを予期していたのだろう、塾生全員がこちらをじっと見ていた。

恥ずかしくて俯く。

……最初からこんなに目立ってしまった。

顔から火が出そう

「高杉君、そちらの方は?」

飛んできた穏やかな声に、俯いていた顔を上げる。

細身の男性と目が合った。

「先生、この女子が塾に入りたいようで外に立っていたので、連れて参りました」

男性が先生と呼ばれたのに驚いた。

……こんなに若いとは思っていなかった。

部屋の中を見回すと、子供から大人まで様々な人がいる。

この男性よりずっと年上に見える人もたくさんいる。

そんな中に混じっていてはとても分からなかった。

でもそれと同時に、この人が、という思いもあった。

ペルリの黒船に乗って密航しようとして捕まり、野山獄に投獄されている時も囚人達に講義をしたと聞いているあの松陰先生。

「あ、まだ名前を聞いていなかったな。名はなんというんだ?」

高杉と呼ばれていた馬の青年の言葉で我に返る。

そっか、まだ名を名乗っていなかった。

たたずまいをきちんと直してから一礼をする。

「和泉夕霧といいます。入塾させていただきたくて来ました」