取り残された私は考える。

……さっきの三人に馬鹿にされたのはやっぱり腹が立ったけれど、相手は侍。

言い返したのがまずかった。

刀も持っていたし、人数もあちらが多かった。

松下村塾では身分も男女も関係ないから、世の中全てがそうだと錯覚してしまった。

侍に無礼なことをしたら、斬られても文句は言えない世の中だ。

それを忘れてはいけない。

「お待たせしました」

またいくつかの本を持ってきてくれた先生に尋ねるように、私は呟いた。

「身分って……何でしょうか」

「……何でしょうね」

先生は答えはくれなかった。

「私は、男も女も身分も関係ないこの塾で学ぶのが好きです。関係なく受け入れてくれる皆が好きです。世の中も、この塾みたいになればいいのに……」

一体どうしたら、そんな世の中になるのだろうか、そう尋ねてみると先生は困ったように笑った。

「難しくてすぐには答えが見つかりませんね。これからもたくさん学んで、どうしたら良いのか一緒に考えていきましょう」

「……はい!」

『学びたい理由、そうして成し遂げたいこと』

あの時は見つからなかったけれど、今はなんとなくだけど目標ができた。

……誰でも自由に学べる、そんな世の中になればいい。

そんな夢が、見つかった。