振り向くと、そこにいたのは一人の青年。
少し日に焼けた顔に、きりりとした瞳。
顔は面長で、まるで馬みたいだ。
馬の青年は私を見て驚いたように一瞬目を見開いて、すぐに表情を緩めた。
「そんな所で、何してるんだ」
笑顔を浮かべたまま近づいてくる。
「えっと……」
答えようと口を開いたのに、馬の青年は何かに気づいたような表情で私の両手を取った。
目を輝かせて。
「もしかして、塾に入りたくて来たのか!」
長い顔がぐいっと迫って、その瞳が私を捉える。
……うわあ、澄んだ力強い瞳。
いつだったか、縁日で見たぎやまんの玉みたいに透き通っている。
「おい、大丈夫か?」
思わず言葉を失ってしまい、ただこくりと頷いた。
「やっぱりそうか、それなら早く先生に知らせてやらんと!!」
そう言うが早いか、馬の青年は私の手を掴んで塾の中に入って行く。
「え、ちょっと……」
抗議の声をあげるが馬の青年は止まってくれない。
まさに猪突猛進だ。
馬だけど。