夢想曲ートロイメライー


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「少しは落ち着いたか」

連れられて来たのは以前晋作と話をしたお寺。

あの時と同じように石段に腰掛ける。

「……はい、すみませんでした」

少し顔を赤らめながら頭を下げる。

柄にもなく、随分と取り乱してしまった。

久坂さんに見られていたと思うと余計に恥ずかしい。

久坂さん、絶対また何か言ってくる。

女なのにはしたない、とか言われる気がする。

……そういえば、まださっきのお礼を言ってなかった。

「あの、さっきはありがとうございました」

「医者として当然だ」

そして久坂さんは微かに眉を潜めた。

「それにしてもお前、医術を学んだことがあるのか?あの手際のよさはとても素人とは思えん」

「私の父、医者なんです」

父、和泉洪白は町のはずれで医者をやっていた。

私も幼い頃から父を手伝ってきた。

それで多少の応急処置くらいはできるようになった。

「そうだったか……」

少なからず驚いたのか、久坂さんは目を見張っている。

女で医術の心得があるものなどそうそういないだろう。