その内容はこうだ。
あの子供達が遊んでいた長屋は通称"ゴロツキ長屋"。
名前の通り、ならず者達が住んでいるらしい。
遊んでいた子供達も"ゴロツキ長屋"の子供。
普段町の人に迷惑をかけているならず者達の子供が怪我をしたからといって、手当てまでしてやる義理はない。
「今まで皆に迷惑をかけた罰が当たったんじゃ。あんな子供、救う価値もない」
職人風の男がそう言うとあちこちから賛同の声があがる。
それまで俯いて話を聞いていたけど微かに声を震わせて呟いた。
「ふざけるな……命は、人の命はそんなに軽いものじゃないわ!!」
目に涙を溜めて叫ぶ。
「出血が酷ければ死んでしまうかもしれないのに……」
どうにも怒りが収まりそうもなかった。
「人の命に重さなんてないわ!!そんな事も分からないあなた達は……」
「そこまでだ」
凛とした、静かだけどよく響く声がした。
それと同時に肩に熱が伝わる。
反対に、頭に上っていた血がすっと引いていく感覚。
私の後ろには静かな表情の久坂さん。
「久坂さん……」
久坂さんは無言で首を横に降る。
それ以上言うな、と言われた気がした。
久坂さんは私の腕を掴むと、そのまま人ごみを掻き分けて歩き出した。
