夢想曲ートロイメライー


「あんたすごいね、てきぱきと手当てしててさ」

「女だてらにたいしたものだ」

みんな笑いながら声をかけてきた。

拍手している者もいた。

「……黙って下さい」

次々とかかる称賛の声を静かな声で遮る。

ぴたりと音が止んだ。

皆驚いた顔でこちらを見ている。

怒りで自分の拳が奮えているのが分かる。

「何で誰も助けてあげなかったの!何で見ているだけだったのよ!」

誰も医者を呼ぼうとはしなかった。

手当を手伝うこともしてくれなくて。

手ぬぐい一つも貸してくれないなんて。

怒りが後から後から湧いて出てきた。

「お嬢ちゃんは知らんと思うがね……」

職人風の男性が遠慮がちに口を開いた。