夢想曲ートロイメライー


あの日からずっと久坂さんの冷たい視線を感じる。

……私そんな嫌われるような事したかな。

塾からの帰り道、歩きながら盛大なため息をついてしまった。

「夕霧、どうかしたか?」

帰り道が一緒の晋作が心配そうに顔を覗き込んでくる。

……思い切って相談してみるべきか。

「晋作、久坂さんてどんな人なの?」

「玄瑞?」

「うん、何か私嫌われてるみたいなんだけど……」

そう前置きして今までの事を簡単に話す。

晋作は何度も頷きながら聞いてくれた。

「そんな事があったか……」

帰り道にあるお寺の石段に腰掛けて腕を組む晋作。

眉間に皺を寄せて何やら難しい顔をしている。

「私、何かしたのかな?」

心当たりはないけど、もしかしたらという事もある。