公園で二人で話したり触れ合ったりしながら幸せな時間を過ごした
結局、笑顔は見れなかったけど、とっても幸せだった
でも、そんな幸せを神様は唐突に奪った
あの時、変な恥じらいは捨てて手を握っていたなら、って、何度も何度も後悔した
俺は夢を見ているような地に足がつかないぐらい浮かれて君と話していた
ずっと相槌を打ち「うん」と言ってくれていた君の声が止みその代わりに大きな‘ドンッ’という鈍い音が響く
俺は驚き音の方を見る……
そこには苦しげに、それでいて満足そうな表情で倒れる女の子がいた
周りは血の海になり彼女の髪や服を赤く染める
そして隣には大泣きしている2歳ぐらいの男の子がいた
背景には大きなトラック。
女性が焦った声で電話をする
多分、救急車を呼んでいるのだろう

「ら、い……くん……」

小さな声が俺を呼ぶ
その時に俺はやっと、全てを理解した
倒れている女の子は俺の大切な人だ、ということを、呼ばれて始めて理解した
まとまりきれていない頭が必死に体を動かし俺は君を抱きかかえた
真っ白なシャツが君の赤に染まる
そんなことを気にする頭なんか残っていなかった

「結衣⁈」
「らい……くん。ずっと……えがお、を、みせて……あげられ、なくて、ごめん、ね?」

君は瞳一杯に涙を溜め俺を見つめる
もちろん俺も、君の顔がはっきりなんて見えなくなっていた
君の頬を濡らす雫はどちらのものなのか。

「結衣っ!そんなこ「あ、のね…」

君は俺の言葉を遮り、続ける
柔らかく吹く風と共にラベンダーの香りが鼻をくすぐる

「わたしっ、ら、い、くん……の、えがお、すきっ……だっ、たよ。」

苦しげに言葉を漏らし今まで決して見せてくれなかった素敵な表情をする

「だ、からっねっ……わたし、のっ…ため、に……わらっ……て、て、ね……?」

俺の頬に少し冷えた君の体温が溶ける
そして動かなくなる君と共に徐々にその温もりは冷たさに変わった

「結衣⁈……結衣っ…ゆっいぃ…ッ、ぅっ…」

俺は救急車が来るまで名前を呼び続けた

君は病院で息を引き取った
『あの日』
見た笑顔。
それが最初で最後の君の笑顔だった--------------