--------------かったるくて堅苦しい入学式
そんな中ふわりと香ったラベンダーの香り
その香りを発する君に俺は一瞬で目を惹かれた
綺麗にまとまった長い髪、ピンと伸びた姿勢
君の全てに目を奪われた
『一目惚れ』
そんな簡単な言葉では表したくないけど、初めて見た後ろ姿に心臓をぎゅうっと掴まれた
苦しい。
でも、見たい、顔を見てみたい。
そんな考えが体中を巡った。
その日から毎日、目で追う日々が始まった。
君の存在に香りで気づかされ見つめる。そんな毎日。
そして、俺はあることに気がついた
君は、決して笑顔を見せなかった
親しい友人にも、先生にも、決して、笑顔を向けない。
見ていないだけかもしれない、そう言われてしまえばそれまでだが
笑顔を見たい。
そう思った。そこからが早かった。
思い立ったが吉日
俺は休み時間に君の席へ向かった
近づくにつれて強くなる甘く酸っぱい香り
頭がクラクラして息が苦しい、おまけにそこまで君に惚れ込んでいることを自覚させられ顔があつい

「堀江さんっ!」
「……?誰?」

君は怪訝な表情で俺をじっと見つめる
見つめられドキドキしてまともな思考が奪われてゆく
睫毛長いな……。唇も可愛い薄ピンクで、目がでっかくて……あ、二重だ……。
……って違う!
君は不思議そうに顔を見つめたままコテンと首を傾げる
可愛いなぁ…っ!
じゃなくてっ!
頭の中では何人もの俺が言い争っている
そんな中、ようやくまともな俺が一人指令をだしやっと口を開く

「俺は、早川雷って言います!あの、よかったら一緒に帰りませんかっ⁈」

噛まずに早口で言い切り知らずに俯いていた顔を上げると君は驚いた表情のまま小さく頷いた。
俺はあまりの嬉しさに飛び跳ねガッツポーズを取る
それから俺は毎日、毎日、飽きもせずに君に話しかけたよね。
でも、中々笑わない君、バカみたいにふざける俺
傍から見れば本当にバカに見えたかもしれない、それでも、本当に一日一日が幸せで楽くて仕方がなかった。

たとえ、それが、自分だけだとしても。

帰り道に君が言った
「いつもニコニコしてて、素敵だね!ピエロみたい!」
って言葉に俺は
「君の専属でございます」
って返したよね。
あの時笑わない君に笑ったよね。
あれ実は、恥づかしかったし、無反応の君が可愛くて笑ったって言ったら、君はそっちで許してくれるかな?