もぞもぞとベッドの中で何回も寝返りを打つ
完全に稔のペースに飲まれて一人で勝手に舞い上がって泣いて……。

「なんで私があんた一人のためにここまで悩まなきゃいけないのよ」

呟いて時計を見る
午後3時30分
学校をあのまま早退したせいで暇になってしまった
単位、落としたらあいてのせいだ
溜息を漏らし欠伸をし目を閉じる
眠たい……。
時計の音をBGMに私の意識は暗闇に溶けていった。

……。
…………。
「……ちゃん。……いちゃ……」
ん…?
「葵ちゃん、おーきーてー!」
ふわふわと浮上した意識は呼ばれた瞬間に駆け上がった
目を閉じて隣に腰掛ける影を目視する
目が合うとその影は人懐っこい笑みを浮かべる

「もう。葵ちゃんなんで帰っちゃったの?しんどかった?」
「な、な、なんであんたがいるの⁈」

慌てて飛び上がり後ずさる

「なんでって……カバン持って帰ってきてあげたんだよ?」
「そんなめんどいこと率先してやるなんてやっぱりあんたはMね」

冷たく返し背中を向ける

「えぇ。酷いよ……。あのね、今日のことゴメンね?ちょっと冷たかったよね……。僕、ちゃんと謝りたくて来たんだよ?」
「別に……。」

短く返し毛布を頭から被る

「あ、葵ちゃん!……ねぇ、こっち向いてよ!」

稔は私から毛布を剥がし急に抱き寄せる

「きゃっ…」

ドキドキと心音が高鳴る
また勘違いしちゃうじゃないっ……!

「反省してるから避けないでよ……。」
「……。」
「僕ね、葵ちゃんが好きなの。大好きなの!だからね、みんなと仲良くしてほしくて……。ゴメンね」

ぽろっと涙が溢れる

「ばか」
「うん。ゴメンね」

嫌われたかと思った
もう一緒に入れないかと思った

「ばかっ。ばかばかばか」
「うん。……って、泣いてる⁈」

抱き寄せた体を離し顔を見つめる稔

「見ないで……」
「葵ちゃんが泣いてる……っ!あ、そうだ、はい!これ!」

稔はカーネーションを一輪手渡す

「なっ、によぉ……。普通っ、バラじゃ、ない、のぉー?」
「カーネーションだってかわいいでしょ!いつも一緒にいてくれてありがとう」

更に言葉を繋げるからもっと涙が溢れた。

「ふふっ……。」
「な、にっ、よぉ……。」
「葵ちゃんかわいい!!」
クスクスと笑う稔

私がSであんたがMで……。
本当はあんたもSだったのね。
サディスティックで一方通行同士でもこれからもよろしくお願いするわ。

-FIN.-