休み時間。
私は言われた通りに裏庭に行き稔を待った
涼しいけど少し冷たい風が吹き抜ける
ふふっ、稔ったらこんなとこに二人っきりなんて……。
意外と男らしいのね……。
ぼーっとそんなことを考えてると稔が来た

「日山、ごめんな」

……。
……あれ?
二人っきりなのに呼び方が違う。

「んで、話って言うのはさ……、」

稔はそこで言葉を切りベンチに目を向ける

「立って話すのもアレだから座ろうか」

二人でベンチに10cmぐらい離れて座る。
その距離は心と同じぐらい遠い気がした

「あのさぁ…朝のアレ、良くないよ」
「何が……?」
「あんな怖がらせること、良くないよ」
「……。」
「それとさ、俺にも心はあるんだよ。」
「…………。」
「その性格、なんとかした方がいいよ。……ん、それだけ」

稔は静かに立ち上がり私を気にせずに去って行く
……一瞬もいつもの稔にならなかった……。
目さえ合わしてくれなかったし……。
‘俺にも心はある’……。
気がつかないうちに傷つけてたのかもしれない……。
気がつけば片目から涙が零れ落ちて一筋の線が出来ていた。
……それにしても冷たかったわね……。
ていうーか!
なんであんたなんかにあんなこと言われなきゃなんないのよ!
悔しい。
なんであんたが他の女、守るのよ
一番は私じゃないの?
声にならない声が涙になり落ちていく
嫌いなら嫌いって言って欲しい
私に興味なんてないこと知ってるから……。
はっきりと言ってくれたら諦めもつくのに。
ならなんであんなに私に構ったのよ!

「ばかっ……」

もうすでにチャイムはなり終わり静かな裏庭に呟くように漏らした涙声だけが響いた

「ばか、ばかばかっ。」

今の私にはこれぐらいしか声が出せなかった。
もうっ……。
勘違いしてたじゃない。
ばか、稔。