学校に着き荷物を置いて朝のことを思いだす。
あんなかわいい顔
ニヤける口元を隠し、ふと稔の方を見る
稔の周りにはたくさんの女

「鈴白くん。ノートの提出って今日だよね?」

色目を使い甘い声を出す女

「あぁ、そうだよ。」

いちもより声のトーンを下げクールに返す稔
男っぽく見られたくて作ったキャラ
そんなキャラさえかわいくて仕方がない

「ねぇねぇ、鈴白くんって好きな人とかいる?」
「いないよ。」
「えーじゃあ、私。なっちゃおっかなぁ……」
「あんたなんかなれるわけないじゃん。ねぇ、私じゃだめ?」

稔はかわいい
でも、周りの女はキモくて仕方がない。
あー……でも、稔のあの態度……。
あれはないわね。
口元さっきから緩みっぱなし、隠し切れてないし、そもそも作ったキャラが台無し。
私はイライラしながらノートを片手に席を立ち稔の所へ向かう。

「鈴白くん」

静かに呼びかけノートを勢いよく机に叩きつける。
‘パンッ’と高い音が教室に響き渡り一気に静まり返る
空気が冷えた気がした

「ノート回収。あんたでしょ」
「あぁ、日山。そんな置き方ないだろ」

私はノートを机に残して稔の声を無視して教室を出る
そして足早にトイレに向かい個室に身を隠す
そしてフタに座り込み顔を覆い隠す
かわいい。
もうそれしか考えられない。
あぁ、恋って嫌ねぇ。
何にも手に付かないぐらいそれしか考えられない。
ふふっ、次はどうやって苛めようかしら?