翌日。私はバイトに出掛けた游さんを見送った後、貸してもらった自転車に乗って買い物に出かけた。
お弁当の材料はもちろんのこと、水筒やレジャーシートなど必要なものを買いそろえようと思った。あまりお金を掛けず、でも、それなりの物は欲しい。
私はお店を数件はしごした。目的の物は買うことができたが、アパートに着くころには、お昼の時間も過ぎてしまっていた。スーパーで買ったおにぎりをかじりながら、夕食の支度と、明日のお弁当の下ごしらえを始める。游さんからは六時に帰ると連絡がきていた。
カチャリ、と時間ピッタリに玄関のドアが開く。「ただいま」の声にキッチンから顔だけのぞかせると、游さんの笑顔がある。
「おかえりなさい」
「いつもご飯の支度ありがとうね」
カバンを床に置きながら游さんが言う。
「いいえ、居候させてもらってるので、これくらいのことはさせてもらわないと困ります」
「そう。じゃあ、お言葉に甘えておこうかな。それで、今夜のメニューはなに?」
「ハンバーグです。お豆腐の」
「豆腐? ……へえ、どんな感じ?」
游さんが私の肩越しにフライパンの中を覗き込む。息のかかる距離に彼の顔があって、私はとっさに身を固くする。
嫌なわけじゃない。ただ、ドキドキが止まらなくて苦しい。私はそれから逃れたくて游さんから少し距離を置く。
「あの、游さん。もう少しでできるので、手を洗ってきてください」
「うん、わかった」
お風呂場に消えていく游さんの背中を見つめながら、私は疼き始めた胸にそっと手を添えた。


