一途な外科医と溺愛懐妊~甘い夜に愛の証を刻まれました~


「ただいま」

「おかえりなさい、じゃなくって、どこ行ってたんですか?」

「うん、ちょっとコンビニ」

 游さんはレジ袋を持ったまま、キッチンの引き出しを開けて何かを探している。

「あ、あった! ……ねえ、由衣子ちゃんそこに座って」

 指示されたのは、ソファー。私は言われた通りに腰を下ろす。

「座ったら目を閉じてくれる?」

「なんですか?」

「いいから。僕がいいって言うまで開けちゃだめだよ」

「分かりました」

 ゆっくりと目を閉じると、ゴソゴソという音だけが聞こえてくる。

「いいよ、ゆっくり目を開けて」

 游さんの言葉を合図に、私はゆっくりと目を開けた。暗い室内に灯るのは、ケーキの上のろうそく。

「これ、私に?」

「そう、バースデーケーキ。本当は、お風呂に入っている間に準備が済んでいるはずだったんだけど、近くのコンビニにケーキが置いてなくてさ」

「もしかして、遠くのコンビニまで行ってくれたんですか?」

「いや、うん。まあ、そんなわけで間に合わなかったんだけどね」

「でも、嬉しいです。今年の誕生日はこんな風に祝ってもらえないかもって思ってたから」

 游さんの気持ちが嬉しくて、何の変哲もないコンビニの二個入りショートケーキが特別なものに見える。

「ろうそく、消していいですか?」

「どうぞ」

 揺れる炎にそっと息を吹きかけた。游さんはパチパチと拍手をくれた。