カクテルを飲む游さんの喉仏がゆっくりと上下する様をみつめながら私は涙腺が緩むのを自覚した。
游さんの言葉で、自分が泣きたかったんだって気付いてしまったから。
「由衣子ちゃん、大丈夫?」
「大丈夫じゃないです。游さんのせいです。游さんが私が泣きそうだなんて言うからですよ……」
おろおろする游さんの顔が涙で歪んで見える。
「すこし、落ち着こう」
「……ムリ」
酒に酔ったせいもあるだろう。泣くのを止められなかった。
「でようか」
游さんは言って、私の腕を掴んだ。
「ねえ、仁。僕たち先に帰るよ」
「え? "たち"って」
振り返った仁さんは、泣いている私の顔を見て驚いたようだ。
「……どうか、したのか?」
「いや、彼女飲み過ぎたみたいで。送ってこうと思うんだ」
「あ、ああ」
「これで足りるよね」
游さんは財布からお札を数枚抜いて仁さんに手渡すと、私を引っ張って店の外に出た。


