そんな私も奨学金を受けながら大学を卒業し、医療機器メーカへと就職を決めた。

大手ではない。けれど、右肩上がりに業績を伸ばしている活気のある会社。それが株式会社フタバメディカルだ。

私の仕事は営業事務。つまり、営業担当者のサポート役。
請求書や資料作成、商品の受発注・管理、在庫や納期管理など。やらなければならないことが山積みで、日々忙しく働いている。

 社会人になっても私は密かに玉の輿に乗ることを夢見ていた。さすがに口に出したりはしないけれど。

そしてできた恋人、西尾隆は実家が地主のお坊ちゃま。三十歳にして営業部の次長になった男。将来有望株。顔よし性格よしそして仕事もできると三拍子そろった女社員の憧れの人。

付き合は今年で二年目になる。どうして私が彼女になれたか、それは彼の致命的なミスを防いだから。営業事務でよかったと、この時初めて人事部に感謝した。
半年前にはお互いの家を行き来するのが面倒になったからという理由で、同棲も始めていた。

交際は順調。のはずだが、このところ、彼の様子がおかしいと感じていた。
しかし、私の二十五歳の誕生日がひと月後に控えていたこともあり、もしかしたらプロポーズの準備かも、だなんて浮かれていた。