オレンジジュースが運ばれてくると、仁さんの音頭で二回目の乾杯をした。
游さんはみんなの話を聞きながら、取り分けて置いた料理に箸を伸ばした。瑞々しかったカルパッチョも、すっかり干からびてしまって、熱々だったペンネは冷めて固くなっている。それなのに文句も言わずに、黙々と食べ続ける。
私はそれをじっと見ていた。なんてきれいにものを食べる人なんだろうと思って、思わず見とれてしまった。
それから穂乃果さんの希望で席替えをすることになった。でも、游さんも私も動かなかった。いまさら誰と何を話せばいいのか分からない。
「ちょっと、由衣子」
突然、紘子に名前を呼ばれて私はハッと紘子の方を見た。
「レストルームに、付き合って」
「は?」
「だから、トイレ」
「いや、分かってるよ。てか、紘子ってばトイレくらいひとりで行きなよ、私行きたくないし」
「いいから、きて」
しぶしぶ席を立つと、紘子についていく。トイレの個室に入り用を足して出てくると、鏡の前で二人で並んで化粧直しを始める。


