菱沼さんは銀座のイタリアンに席を取ってくれた。少し値が張るけれど、私が元気になってくれたらそれでいいと言って。
「それで、彼の浮気を疑ってるの?」
コース料理を堪能しながら、菱沼さんに打ち明ける。今夜は少しだけ、食欲が戻ってきた気がする。
「はい。だって、助手席に女物のピアスが落ちてたんですよ。疑わないわけがありません」
「ピアスね~、私もあったな、そういうの」
菱沼さんはワインを傾けながらまるで懐かしむように目を細める。
「社長が浮気していたんですか?」
「私もそう思って彼に聞いたの。車の助手席にピアスが落ちてたけど、誰のなのって」
「それで、どうなったんですか?」
私はゴクリと唾を飲み込んで、スパークリングウオーターを満たしたグラスを握った。
「結局、お姉さんのだった。信じられなかったから、お姉さんにあったよ。そうしたら、片方だけのピアス見せられて、謝られた。騒がせてごめんなさいって」
「……良かったですね。でも私のはそうじゃないと思います」
「こら! そうやって卑屈になるのはやめなさいよ。まず確かめたらいいじゃない。彼って、簡単に浮気する人なの? そんな人を好きになったの?」
「違います」
「でしょう? 天野が信じないどうするのよ」
「そうですね」
菱沼さんに正論をかざされて、また悲しくなった。
「ちょっと、なんで泣くの」
「ごめんなさい、すぐに泣きやみます」
ハンカチで涙を拭いながら不意に顔を上げると、店内に入ってきた男女の姿が目に入る。
「……うそ。游さん」


