私は独り車中で游さんの言葉を反芻する。
游さんの優しさや私に注いでくれる愛情は偽物じゃないはずだ。でも、私との結婚は考えていない。それが事実のようだ。
「今は考えられないってことかな、それともこれからもずっと考えられない?」
私はため息を吐きながらカーステレオのボリュームを下げようと体を起こした。その時、助手席の足元にきらりと光る何かを見つけた。
「なんだろう?」
私はそれに手を伸ばして拾い上げる。
「ピアスだ」
大粒なダイアのピアスは、もちろん私のものではない。游さんはピアスを開けていないので、彼のものではない。
じゃあ、誰のものか。考えたくはなかったけれど、女性の存在が浮かんだ。
游さんは忙しいといいながら、ピアスの持ち主である女性と会っていた。
そして、その女性と私を天秤にかけている。だから私との結婚は考えていないってことのなのかもしれない。
父親に紹介したいと言ってくれていたのに、あれからその話題が出ないのはこういうことがあったから。
そう考えると、とても合点がいく。
游さんを疑いたくはなかったけれど、酔っているせいもあって自分の感情をコントロールできそうもない。
「遅くなってごめん、慎一郎に引き止められてさ……って、寝ちゃったんだ」
游さんが車に戻ってきた時、私は眠ったふりをしていた。游さんと話をする気持ちにもなれなかったし、彼の顔を見たら泣いてしまいそうだったから。


