「では」
慎一郎さんは姿勢を改めて、コホンと咳をする。
「実は、俺たち結婚することにしました。な、紘子」
「ね、慎一郎。うしても先に二人に話しておきたくて、呼んだの」
紘子ははにかんで、頬を赤く染める。
「結婚? 慎一郎さんと紘子が? すごい! おめでとう!」
「ありがとう、由衣子。それともう一つ、報告があるんだ」
「なになに?」
「お腹に赤ちゃんがいるの。今、三か月目に入った所」
「……うそ、紘子お母さんになるの?」
「うん」
驚きと喜びで言葉がでてこなかった。紘子が、母親になるなんて想像できそうにない。もちろん、同級生には二人目を産んだ子もいる。
でも、結婚も出産も私たちにはまだ先のことだって勝手に思っていた。
「おめでとう」
游さんが言った。つられる様に私もお祝いの言葉を口にする。
「お、おめでとう」
その瞬間、涙が溢れ出た。
「ちょっと由衣子! なに泣いてんのよ」
「だって、なんか、うれしくて、私。……紘子、ほんとにおめでとう」
「ありがとう。ほら、ティッシュ」
紘子は私にボックスティッシュを投げてくれる。そう言う豪快な所が紘子らしい。私はそれをキャッチして涙を拭った。
「ごめんなさい、こんなおめでたい席で泣いたりして」
「いいんだよ。由衣子ちゃんがそれだけ喜んでくれたら俺も紘子の嬉しいよ。もちろん、お腹の子供もね。じゃあ、乾杯しようか」
慎一郎さんはシャンパンのコルクを抜いて自分と私のグラスに注いだ。
「游は運転があるだろ。だから紘子同じジュースでいいよな」
「そうだな」
游さんと紘子はシャンパンの代わりにジンジャーエールで乾杯する。
慎一郎さんが作ったというお洒落で美味しい料理を堪能しながら話題はいつしか私たちのことになった。


