一途な外科医と溺愛懐妊~甘い夜に愛の証を刻まれました~


「だから、結局はそこまでの男なんだよ。かわいいだけの女に騙されるバカ男。返してもらわなくていいって」

 そう言って紘子は、ビールを飲み干した。デパ地下で買ったお惣菜を摘まみに、私もビールを飲む。へこんで帰宅しても、仕事終わりのビールは旨い。

「……でも」

「未練を断ち切るためにも、早く次を見つけないとね。で、もう少し待ってて、由衣子の誕生日までにはスペシャルな合コンセッティングするから」

「スペシャル?」

 そのに魅力的な言葉に思わず反応してしまう。

「そう、スペシャル。由衣子は目指せ玉の輿!でしょ? 進路希望調査に書いたじゃん」

 紘子はずいぶんと、懐かしいことを言う。それは高校生の頃の話だ。校舎の屋上で「玉の輿に乗りたい」って叫んだりしていた。

「ああ、でももうそういうの、いい加減諦めようかなと思ってる。今は、ただただ、愛が欲しい」

 私を好きだと言ってくれる人がお金持ちである確率なんて、宝くじで一等賞をあてるよりも少ないんじゃないかと思うから。

「今の由衣子としてはそうだよね。でも、あたしはどうせ付き合うなら金持ちにこしたことはないな」

紘子はビールのグラスをテーブルに置くと、遠くを見るようしてまた口を開いた。

「お金持ちって言ってもいろいろいるけど、例えば大金を稼いでるってことは、それだけ努力してるってことでしょ? 親の会社を引き継いだにしても、無能だったら潰しかねない。いい人材を集める力だってそう。そう言う努力や才能に惹かれてるんだって最近思うようになったの」

紘子の話を聞いて、私の玉の輿願望は割と薄っぺらいと気付かされた。
紘子は紘子なりにちゃんと考えてるようだ。頭が下がる思いがした。

「とにかく、元彼と寝盗った女を見返すためには元カレよりもすんごくいい男を見付ること! いい、絶対だよ!」

「そうだね。 ……合コンかぁ、久しくいってなかったな」

 社会人になって何度か参加した経験はある。けれど、そこではあまりいいと思える男性に出会ったことがない。理想の王子様になんて、そうそう巡り合えるはずもないんだ。