美味しいコース料理を堪能して、最後に運ばれてきたデザートを頬張る。
「由衣子ちゃんって、いつも美味しそうに食べるよね」
「そうですか?」
言いながら游さんを見ると、私をじっと見つめていた。
「やだ、そんなに見ないでください。恥ずかしい。……ほら、游さんも食べてください! おいしいですよ」
けれど游さんはニコニコとしたまま、スプーンには手を伸ばそうとしない。
「うん。でも、僕は由衣子ちゃんが食べたいな」
「な、なにいってるんですか」
いきなりそんなことを言われた私は動揺してワイングラスを倒してしまった。幸い入っている量が少なかったので、床を汚すことはなかったのだけれど。
「どうしよう、スカートが……」
持っていたハンカチで拭いては見たが、赤く広がった汚れは取れそうにない。
「大丈夫? 早く洗わないと染みになっちゃうね」
游さんは立ち上がると私の腕を掴んだ。
「……行こう。部屋、取ってあるんだ」
「でも」
「デザートが食べたいなら後でルームサービスで取ってあげる」


