游さんがディナーに選んだのは、新宿にある高級ホテルのレストランだった。シャンデリアが煌めくラグジュアリーな空間。
客の年齢層も高めで、外国人のは姿も目立つ。
普段よりもだいぶドレスアップしたこの服でも違和感のないその場所に、私は少し緊張していた。
「由衣子ちゃん、大丈夫? なんか、ふらふらしてる」
「ああ、いえ、すみません。実はこの靴、ヒールが高いので上手に歩けないんです」
それに加えて、ここの床の絨毯がふかふか過ぎるから余計に歩きにくい。
「あはは、なんだ。じゃあこうすればいいね」
游さんは私の腰に手を回すと、ぐいと引き寄せる。
「あの、游さん」
「大丈夫。誰も気にしないよ」
游さんはそういって、出迎えた店員に声を掛けた。
「予約した永峯です」
「永峯様ですね。お待ちしておりました。どうぞこちらへ」
案内されたのは夜景が見える窓際の席。蝋燭の炎のがゆらゆらと揺れるオレンジ色のきらめきが溶けるように写り込んでいる。
「すごくきれい」
「うん、そうでしょ。僕のお気に入り。料理も美味しいよ」
そんな話をしているとホテルの制服を着た人がテーブルまでやってきた。ネームプレートには支配人とある。


