念入りにメイクをして、髪をアップにする。普段はあまりつけないピアスとネックレスを付けた。クラッチバックに財布とスマホを入れて、リビングに出ると游さんはすでに着替えを済ませていた。細身のスーツが決まっていて、思わず見惚れてしまった。
「お待たせしました」
「うん。いいね、すごくかわいい」
ストレートに褒められて、私は真っ赤になりながら俯く。
「そう言う反応されると、いじめたくなるんだけどな」
游さんは私の肩に腕を回し、そのまま首筋に唇を押し当てた。それだけのことなのに、まるで電流が流れたかのようにピクンと反応してしまう体。
「このまま食べちゃいたい」
そのまま肩を甘噛みされて、思わず声を漏らした。
「……だめだよ、そんな声出して煽ったりしたら。せっかくのディナーが食べられなくなる」
「だって、游さんが意地悪するから。私のせいじゃありません」
戸惑いながらもそう訴える。游さんは「ごめんごめん」といいながら私から体を離す。游さんって、こんな人だったろうかと戸惑いつつ、積極的で意地悪な游さんも悪くないと思ってしまう。
「じゃあ、行こうか」
「はい」
先に靴を履いた游さんは私を玄関に置いてある椅子に座らせる。そして、あのパンプスを出して来て片方ずつ履かせてくれた。
「ガラスの靴だったらよかったのにね」
なんていいながら。


