夕方になって帰宅した游さんは、私の住んでいるマンスリーマンションに荷物を取りに行こうと言った。
「もし体がつらければ、僕だけ行くけどどうする?」
「体調はもう大丈夫なので私も行きます」
同居していたとはいえ、タンスの中の下着とか色々見られたくないものがある。私は游さんの車に乗せてもらい、契約しているマンションへと向かった。
荷物はあっという間にまとまった。大きなスーツケーと紙袋数個が私の所持品全てだ。もともと荷物が少ない上に、金銭的に余裕がなくて買い物を控えていたから増えるはずもない。
それらをトランクに詰め込んで、游さんのマンションに戻った。
「取りあえず空いて所にしまっておいてくれればいいよ。後で由衣子ちゃんの専用スペースを作ってあげるね」
「はい。ありがとうございます」
シュークロークを開けると、私のパンプスがぽつんと片方だけ置かれている。
「……これ、私の靴」
「そう。あの日、拾った君の靴。これで二足揃ったね。……そうだ、今日はこれを履いて食事に行こうか? あのワンピースを着てるところ、またみたいな」
「はい、ぜひ」
「じゃあ、決まり。明日は休みだし、ゆっくりしようね」
急に決まったディナーに私は心躍る気持ちで仕度を始めた。


