「ごめんね、由衣子ちゃん。もう泣き止んでよ」
游さんは困惑した表情で私の涙を指で拭った。
「こんなに泣かせるつもりはなかったんだけどな。困ったな。抱きしめたいのにここじゃなできないし」
考えるそぶりをして游さんは、私のカバンを手に取った。
「帰ろう」
「帰る?」
「うん、だって入院するほどのことでもないし、なにかあったら僕が診てあげる。だから、うちに帰ろう」
游さんは私を抱き上げると処置室のドアを開けた。
「游さん、降ろしてください。私、歩けます」
「いいから。大人しくしてて」
廊下を歩く私たちを病院の職員も、待合室の患者も、みんなが注目している。恥ずかしくて顔から火が出そうだ。
游さんは受付に「処置の患者、僕が連れて帰るから」と声を掛けて、正面玄関から病院の外へと出る。
そしてそのまま職員専用の駐車場まで歩いて黒の外車の前で私を下ろした。
「ふらつかない? 大丈夫?」
「はい、大丈夫みたいです」
「うん。じゃあどうぞ」
右側の助手席を開けて私を乗り込ませると羽織っていた白衣を脱いで、後部座席に放り投げる。それから游さんは運転席に乗り込んでエンジンを掛けた。


