悲しかった。

みんなが僕をそう言う目で見ているんじゃないかと思って、人間不信になりそうだった。

だから僕は恋に臆病になってしまったのかもしれない。

それから特定の相手を作らずに過ごしてきた。それもなんだか空しくてしばらくの間ひとりでいた。幸い仕事は忙しかったし、暇を持て余すこともなかった。

そんな時、人数合わせで呼ばれた合コンで由衣子ちゃんに出会った。

他の女の子たちが僕に見向きもしない中、由衣子ちゃんだけは気にかけてくれた。それが素直に嬉しかった。

それでたまたま帰る所がないというから家に連れ帰った。

もちろん、下心がまるでなかったと言ったら嘘になるけれど、彼女の同意もなく手を出そうとかそんなつもりは毛頭もなかった。

僕は、正体を明かさないまま彼女との生活を続けていった。気持ちが高まって彼女を抱いたけれど、あと一歩が踏み出せなかった。

彼女は僕の肩書に目がくらむような子じゃないとは分かっていたけれど、心のどこかで疑ってしまっていたのかもしれない。

酷い男だと思われただろうか。でも、彼女は僕との生活の中でこういってくれた。

『游さんとなら、なんだって嬉しいんですよ』

 由衣子ちゃんの言葉を聞いて、僕は心底安心したんだ。

だからすべてを打ち明けて、好きだと伝えようと思った。

それなのに。君はいなくなってしまった。片方の靴だけを残して。