そんな菱沼さんは私の変化にすぐに気付いた。
「……なんか、あった?」
泣きはらした顔は化粧でごまかしたはず。しかし彼女の目は誤魔化せなかったようだ。
「目が腫れてるね、泣いたの?」
「あ、いや、これは。昨日友達と飲み過ぎてしまったからですよ」
「ほんとにそれだけ?」
紘子と飲んだのは事実なので嘘ではない。
「はあ、まあ」
だからそう言って誤魔化した。それなのに……。
「ちょ、なにあの二人!」
菱沼さんは驚いた様に声を上げた。
ふり返るとそこには、おそろいのランチバックを手に持った隆とまどかがいる。
弁当はまどかが作ったのだろう。今までコンビニか外食だったのに、彼氏ができるとこうも変わるものなのだろうか。それとも私へのあてつけで、仲良しアピール?
どちらにしても、仲睦まじいツーショットなんて、目にしたくない。
「おそろいの弁当入れって、あれどういうこと? あなたたち、別れたの?」
「……はい」
「いつ?」
「昨日です」
「昨日? なんでまた。ちゃんと、お互い話し合って決めたんだよね?」
どうしてかとえば、二人がデキてしまったからなんだけど、そんなことは口が裂けても言えない。
もしことの成り行きを話したら、正義感の強い彼女は、隆とまどかを責めるだろう。そして、私の味方をしてくれるはずだ。とても心強い存在ではあるけれど、これ以上いざこざを拡大したくなかった。
「……はい」
だから、私は嘘をついた。


