一途な外科医と溺愛懐妊~甘い夜に愛の証を刻まれました~


 朝食を食べ終えると、二人でマンションを出た。

「じゃあ、あたしはこっちだから」

 駅の前で紘子は足を止める。

「そっか、じゃあ」

 私は重い足取りで駅舎へと向かった。

できるなら今日は会社に行きたくなかった。隆とまどかに会うのは辛い。
このまま会社とは反対方面の電車に乗って、どこかへ行ってしまおうか、とも考える。

そんな思いを察したのか、紘子は私を呼び留めた。

「由衣子さ、今日はさすがに仕事行きづらいと思うけど、あんたは悪くないんだから堂々としてなよ」

 紘子の言葉は逃げ腰だった私の気持ちをしっかりと会社へ向けてくれる。

「わかった」

「いってきな」

「うん、いってくる」

 紘子に手を振り、歩き出す。スイカをタッチして改札を抜ける。そこへちょうど到着した満員電車に、私は身を委ねた。