どしゃ降りの雨

屋根に穴でも開きそうや




ボケっと庭を見てた

山南副長さんの気配
わざわざ気配出して近づいてくる

山南副長さんらしいことや


「なんでかなぁ…」

「独り言ですか?」

「いいえ、山南副長さんがいてるやん」

「気づいてましたか」


廊下の角からゆっくりと

うちの隣に立つ



「今からは、独り言やから困らんといてや?
訳もなく、消えてしまいとなるんや
うち、ここでどんな生活してたんやろ
少し、ほんのちょっと思い出してきたんやけど…
思い出さへん方が、ええのやろか
それとも、土方副長さんの言うてたように
外の暮らしがええのやろか
…うち、おらん方がええんやないかな」



「ある人も同じ事で悩んでいました
自分は、武士になりたくても、なれない
いつか、ここを追い出される日がくる
ならば…自分が武士として尊敬する者に
最期を任せたい
僕は、そのある人と同じ気持ちでした
だから、何も言ってあげられませんでした
今も、その独り言にどういう言葉を返すべきか答えを持ち合わせていません
ですが… 僕は、まだ諦めていませんよ
ある人…いや、君が僕を必要としてくれたからね」


「山南副長さん、おらへんかったら困る
うちにおいしいお茶入れてくれるのも
こんな独り言、ニコニコ聞いてくれるのも
他におらんもん」


同じ歳なのに、なんて安定感のある人やろか

この人にフワリと笑われたら、すべて
許されたように、楽になる


「山南副長さんのお茶飲みたい」

「いいですよ~」


素直に甘えるやなんて、恥ずかしいけど


「折角、お茶をいれても一人では
味も香りも、どうでもいいですからね
君が居てくれて本当によかった!」



茶飲み友達かいな…


「そうか!山南副長さんと飲むから
更に美味しいんやな!?」


「はははっ ありがとう嬉しいよ!」




思い出して… 



ええのやろか…