【土方歳三】




近藤さんと総司が出立した

山崎は、見送りに帰って来なかった

総司とは、ギクシャクしていても

近藤さんの包帯の付け替えがあったのに


今後の話し合いを幹部として解散を
告げた時


「戻りました」


山崎は、言い訳をしない

聞いても無駄だが…

あからさまに元気がないし

顔色が悪い


「大丈夫か?」

「多分」


多分???

そりゃ、どっちだよ…


心配する幹部らを追い出した永倉が


山崎の顔を覗き込む


「体調悪ぃのか?」

「悪く…ない…と、思う」


曖昧な言葉ばかり…







「風呂入るか!?」

「うん」


あっさりかよ…


「土方さんも一緒に三人で入ろうぜ!
よかった!原田のバカが、朝風呂入りてえとか言って、沸かしてたんだ!
先、行っとけ!」

「うん」



何かあったのは、間違いない


永倉が鍵を開け、中に入るとすでに湯に

浸かっていた


上手に体を隠しているが


永倉と目が合った


同じ事を思ったようだ


ザバザバと体を洗い山崎の両隣に座る

山崎があっさり風呂に入ることを

了承したのは、この痣を見せる為だろう



「怖かっただろ?」

永倉の言葉に、頷いた

「殴られたりしてないか?」

頷いた

「慶喜様がね… どうしてもって…」

まさか、相手が慶喜様とは…

「怖くて… 逃げようと思ったけど
敵わなくて…」

手首にくっきり残る手痕で、抵抗した事がわかる


首や胸のあたりには、口づけの痕


「心の中で、助けてって…何度も
何度も…叫んだけど…
そんなの…無駄やもんな…」


静かに涙を流す山崎につられ、永倉も

泣いていた


「新選組の為に、お前が犠牲になる必要はない…つらい思いをさせ、すまなかった」



俺も、涙が溢れた