【土方歳三】



山崎がまた、笑わなくなった


ヘラヘラしてたのが、まるで嘘のようだ


お馴染みの風邪が治ってから、仕事三昧


「手伝ったろか?」


俺のためた書類を見て、呆れ顔で横に並ぶ

山崎の仕事は、早いが丁寧だ

誤字脱字はしっかり訂正し、字は俺のと

変わらない

ハネるとこのクセなんかも真似ている

とはいえ、溜めに溜め込んだ書類を

二人でしても、やはり徹夜だった


「沖田の事やけど…」


筆やら片付けながら、山崎が喋り出した


「近藤局長のお妾に、面倒見て貰うのは
あかんかな?……吉村を使いたいんやけど
……いや、副長が沖田をここに置いときたいなら、吉村に頼むけど」


病み上がりで、しかも忙しい

監察方は、出ずっぱりで

山崎は、その様子を知っている


というよりは、コイツ…

勝手に休憩交代とかしてやってる


俺が知らないとでも、思っているのか?


吉村が復帰すれば、その交代だけでも

助かるな……


「総司が、素直に行くかわからんが
話してみよう」


「近藤局長から、話した方がいいですね」


山崎…

お前は、平気なのか?とか聞くと

やかましいって、怒るだろうな…


「そうだな」


山崎がこんな風だから、俺も仕事以上の

話が出来なくなった





「ありがとな!少しでも寝とけ!」

「いえ、ちょっと私用がありますので
出て来ます」

「……わかった」

「あちらの偵察もして、夕餉前には
帰ります」

「山崎…」

「なんですか?」

「少し抱きしめたい」

「ヘンなこと言わないで下さい
失礼します」

「じゃあ、また皆で風呂に…」

「命令でも、もう嫌です」

「わかったよ……だが、俺はお前に
惚れてるからな……」

「だったら、嫌いになって下さい
恋心ほど、面倒なものはありません」



それが出来りゃ、くよくよしてねぇよ