「なんでですか?」

「噂を聞いた
御所の忍は、その証を持っていて
主にだけはそれを見せているとな
俺、そんなのみてねぇし」

「……吉村、そんな話知ってる?」

「いえ、初耳です」


わてが、いない十年程で、何かしきたりが
変わったわけではなさそうだ

「副長……確かに御所の忍は、主から
忍である証を貰います
ですが……主にも見せることは、ほとんどないですよ?」

「山崎さんの言う通りです
俺は、山崎さんを主君としてますが
見せてませんし
それに、俺のは物ではないですから…」

「見てみたいという興味本位では駄目か」




どうしたものかと、吉村と目を合わせた





「あっ!もしかして山崎の右太ももにある
あの赤い菊か?」

「あぁ 綺麗な入れ墨だと思った!
あれな!!」

「お前ら……」

しっかり人の体みとるやないか!!!

二人を睨む



「こいつらが見てて、俺が見てないのは
ムカツク!!!」

「僕もみたい!!!」

「俺も見たいなぁ」


「吉村の見せれるか?」

「ええ 構いませんよ」

「なら、副長…俺の長巻下さい」


吉村は、上半身裸になると左脇腹に

青い菊の紋




「あれ?俺らがみた菊と違うなぁ」

「おう、違うなぁ」


副長に預けてあったわての長巻を受け取る

刀を分解して茎を副長に向けた

赤い菊の紋

「コレがお前の?」

「はい」

「なら足のは、なんだ!?」


とりあえず、刀を下に置き

立ち上がった

袴の裾を上まで上げて見せた

どうせ、見るまで煩いのなら

見せて減るものでもない


「綺麗……」


総ちゃんが呟いた


「もうええか?」


「おう」


副長の返事を聞いてから、袴を正し

刀を元に戻す


「それって、菊ちゃん?」


さすが……総ちゃんやな


返事の代わりに微笑んでおく


「菊なら、花でもあるな」

「そのつもりです」


刀を戻し終え

泣かないように、気合いを入れた


「君ちゃんが彫ってくれたんです」