「大変だ! 峰ちゃん先輩が廊下で倒れたって!」


その時隣のクラスの吹部の男子が教室にやってきた。


「なんだって!?」


そしてそれに一番に食いついたのは当然私。


「やったー今日部活休みかな」

「いや、部長不在くらいで休みにはならねえだろ」

「サボりたいなー」


なんて同じクラスの部員が言ってるそばで「先輩はどこに!?」と男子に肩を掴んで迫った。


「あ………今は運ばれて保健室だって」

「なんだって!? 峰ちゃん先輩が私以外の人に運ばれるなんて!」

「いや、そばにいた人が運ぶだろ普通」

「峰ちゃん先輩をお姫様抱っこするのは私の役目だというのに!」

「いや、そんなこと峰ちゃん先輩に知られたら半殺しにされるぞ」

「くそっ、峰ちゃん先輩をお姫様抱っこする絶好の機会を逃すなんて!」

「いやだから樫野、それお前の命が危ういぞ」

「峰ちゃん先輩は保健室だね!」


そして私は保健室までダッシュで向かった。


保健室には先生がいて「峰くんならぐっすり眠ってるわよ」とカーテンで遮られたベッドを指差した。


「私、職員室に用事があるから見ててくれるかしら。誰か来たら私は職員室にいるって伝えてくれるとありがたいわ」

「はい、もちろんです」


「じゃ、よろしくね」と出て行った先生を見送って、カーテンをそっと開ける。


「峰ちゃん先輩……?」


ベッドのヘリに手をついた上に顎を乗せて顔を近づけてみる。


「…………あ、樫野……?」


ゆっくりと目を開けた峰ちゃん先輩と目が合う。


「先輩…………」

「あー、そういや俺倒れたのか」

「先輩を運んだのは男ですか、女ですか?」

「俺の心配をしろよ」


声色がいつもと変わりなくてほっとする。


「よかった、ぶっ倒れたって聞いて飛んで来ちゃいました」

「大袈裟だな。ただの寝不足だよ。昨日徹夜しちまったから」

「徹夜ですか? AV鑑賞でもしてたんですか?」

「お前は俺をなんだと思ってんだ」 


私を睨みつけた先輩が起き上がろうとして慌てて止める。