「それでね、彼が『お前なんか可愛いわけねーだろ』って言うから私つい……」

「ひどい彼だね。私ならこんな可愛くて素敵な君にそんな暴言思いつきもしないよ」

「樫野くん……」


恋愛相談も割とよくされる。経験は皆無だけど私のアドバイスは意外に効果がある。


「じゃあ彼にこう言ってごらん。『私の魅力がわからないなんてあなたはかわいそうな人ね』ってね」

「ありがとう樫野くん……!」

「相変わらず寒気がくるくらい素晴らしいアドバイスねー」


女の子が喜んで去っていくのを見届けた恵ちゃんが呟いた。


恵ちゃんは私の口説き文句が通用しない数少ない女の子だ。おまけに背丈も似ているから何かと気が合ういい友達だ。


「あーんなアドバイスしてるけど、樫野くんは誰かと付き合ったことはあるの?」

「え? 女の子はみんな好きだよ」

「いや、そうじゃなくて、男子と付き合ったことはあるかって聞いてるんだけど」

「この私を女として見る男がいるわけないでしょー」


ケラケラと笑うと、「まあ……そうね」と恵ちゃんは苦笑した。


「むしろ私が男子を女の子扱いすることもあるしね」

「あ、でも峰先輩にはそんなことないわよね」

「前に雨に打たれてずぶ濡れになった先輩にタオル渡して『まるで雨に打たれて拾われた子犬のようで思わず拾ってあげたくなっちゃいましたよ』って言ったら回し蹴りされたよ」

「…………そう」


峰ちゃん先輩は可愛い扱いをされるとキレるタイプだ。素直じゃないなあ。