手が扉を開けていた。力が入らなかったから、わずかに開いただけだ。


音がしないこの空間ではそのわずかな音でもよく響く。その音に、中の彼が振り向いた。


「…………前田さん?」


ドア越しに彼と目が合ってしまった。


わああああああと頭が真っ白になってしまった私はドアを開けて中に入ってしまった。


心臓の鼓動が頭に響いて、何かを考える余裕はなかった。


「あ、あのっ、平坂くんっ」

「何?」


私の目は彼の顔から下にいっていた。


「な、なんでそんな格好…………!?」


彼はワイシャツのボタンを全て外していた。おかげで彼の素肌が露になっている。


普段は見えない綺麗な筋肉がワイシャツから覗く姿は、素っ裸より色っぽく見えた。


「え? ああ、暑いから中に着てたTシャツ脱いで着直してたんだけど。そこに前田さんが来たから」

「わああああ、すみませんっ」


なんてとこに私は現れてしまったんだ。


着替え中とか、全然考えていなかった。彼が一人でいるからチャンスとしか考えられなかった。


「ご、ごめんなさああああああいっ」


私は叫びながら教室から出て行った。走りながら彼の体が頭から離れなくて、わけのわからない雄叫びを発しそうになった。