樫野くんとはまた違った端正な顔立ちに加えて、誰とでも仲良くなれる気さくな田崎くんは男女ともに人気があって、他の男子とは仲良くなれなくとも彼となら全然話せる女子も少なくない。


おまけに成績優秀。ここまで完璧だと何か裏がありそうだ、なんて女子の間では笑い話になるほどだけど、あいにくそんなことも全くない。


「健が前田さんと付き合い始めたってほんとか?」


彼の目と声色で本気で心配していることがわかった。


一匹狼かつ不良と名高い平坂くんと、クラスでは地味な印象のわたしの親友の麻紀。いくら彼と仲がいい田崎くんでもその不釣り合いな二人がくっついたと知れば信じられないのも無理はないだろう。


「それはクラス委員として心配してるの?」

「半々かな。個人的にも気になって。健が悪い奴じゃないのはわかってるけど、不良には違いないから」

「大丈夫みたいよ。麻紀、前よりも笑ってることが増えたから」


笑ってみせると、田崎くんはほっとしたようだった。


「それにしても意外だよな。健と前田さんとは」

「麻紀の片思いだったのよ。あの子、平坂くんのことちっとも怖がってなくて」

「珍しいよな。普通なら近寄ることすらできないだろ」

「わたしは今も難しいわね」

「仕方ねえよ」


田崎くんも笑っていた。