ざわざわと騒がしい教室。
河野は前の方の席で、私の席からは
背中しか見えない。

あ…。


チカが河野に寄ってなにか話してる?


こんなに離れていては何を話してるか
わからない。


河野は、何を考えてるんだろう?
なんで私なんかを好きとか言ったんだろう。
私は、異端だ。
普通、女子は男子を好きになるし、
その逆だって。
それが正しい姿のはずなんだ。
私はおかしいのに…
でも、止まらない。
ずっとチカを見てしまう。
やっぱり、好きなんだと思うな。


陽菜はひたすら二人の姿を眺める。

胸が苦しい。
あの二人がそばにいるのは嫌だ。
チカ、こっちきてーーー

河野が振り向き、目が合う。
陽菜は後ろを向き、極端に目をそらした。

ぷち。

何かが切れる音がした。

足音にするならズカズカ。
明らかに左右に体を大きく振りながら。
彼はこちらにくる。

「おい!いい加減にしろよ」

あからさまに怒っている。

河野は陽菜の腕を掴み、強引に教室をでていった。