ずっと側にいてくれた。
私の好きな人。
でも、あなたはきっと、私の気持ちには気づかない。それでいい。
だからお願いします。
ずっと友達でいてください。


寒さが薄らいでくる、この季節を、
人は春と呼んでいる。
こうも暖かいと、とにかく眠くなるのは、
人もまた、動物だからなのだろ…

がつーーん!!

「いだーーぃ!何すんの!?」

「何をブツブツ言ってるんだ桜木!!そんなに眠いなら廊下に立って寝ていなさい!」

咄嗟の痛みに薄く涙がホロリ。
頭頂部を押さえる。
眠たいのを必死に堪えていたというのにこの
「ゴリラは」

「…もう一度言ってみなさい」

やば?!
つい、ゴリラだけ声にでちゃった‼

「いえ、最近のゴリラは頭がいいなぁって思っただけです~」

「さ、く、ら、ぎ~、後で職員室に来なさい」

あ、フォロー間違えた…

「は、はぃ~…」

低い鐘の音が教室に響き、ゴリラ……、先生は去っていった。

「ちょっとちょっと、陽菜~」

明るい声で近づいてきたのは友人のチカ。
ストレートロングヘアが本当に綺麗な女の子。

「ゴリラの授業は気を付けなきゃダメじゃんー」

唇を尖らせ、私のことを本当に心配してくれる。親友だ。

「…、てへ★やっちまった」
「もー。あ、次の授業って体育だよね?」
「そうだった!着替えなきゃ、更衣室いこっか!」

慌てて更衣室へと向かった。
更衣室のロッカーは自由制だから、私とチカはいつも隣のロッカー。

隣の彼女をチラリと見る。
慣れた手つきで制服から体操服へと着替える彼女を、私は嫌な目つきで見ている。

…ほんと、気持ち悪いよね。

私の心がそう呟く。
こんな自分が嫌いだ。
どうか、彼女にこの気持ちが悟られませんように。

「陽菜?着替えないの?」

チカはキョトンとしている。

「あ、忘れてた。へへ、着替えるょー」
「私、委員会だからちょっと先にいっちゃうね!体操のときはまたペアになろうね!」
「そうだったね!うん!待ってるょん」

手をふり、彼女を送り出した。