「遅くなってごめんね。
仕事が長引いちゃって…」
あたしがそう言うと直美は聞こえているのか
聞こえていないのかわからないけれど
ニコリと笑ったのでそれ以上は何も言わなかった
数ヶ月ぶりの直美との再会。
話したい事や聞きたい事が沢山あるのだけれど
クラブ内で話すのは一苦労なので2人共あまり多くは口を開かなかった。
本来なら久々の再会となれば2人でゆっくりといろんな話しに花を咲かせる方が良いのかもしれない。
けれど直美は「クラブへ行こう」と提案したのだ。
何故クラブを選んだのかは定かではないけれど
離婚してからというもの仲間内で1番『ぶっ飛んでいる』と言われていたあたしが大人しくしているものだから直美からすればつまらないのだろう。
だから昔を思い出させる為に
昔のあたしに戻す為に
直美はここを選んだのだろうとあたしは勝手に解釈していた。
先程頼んだお酒が無くなりかけた頃、
直美はホールの中心へあたしを引っ張り出した。
流れているの2人のお気に入りの曲だ。
すると直美はあたしを挑発するかのように踊り始めた。
あたしも負けじとステップを踏もうとしたが
高いヒールを履いているので足がもつれ、
フラついてしまう。
そんなあたしの様子を見て直美は大笑いし
そのせいであたしの負けず嫌いな性格に更に火をつける。
それと同時に昔の自分が蘇って来る気がした。
