平日という事もあって、中にはそれほどの人がいないようだけれどホールが狭いせいか歩くのにも一苦労する程だった。



人混みをかき分けてカウンターに辿りつくと適当にお酒を頼み辺りを見回す。



中心で踊り狂う者やカウンターでお酒を楽しむ者、端の方で女の子を引っ掛けている者など様々だった。




バーテンダーからお酒を受け取り早速頂こうとした時、スッと1人の女性が隣にやって来たかと思うとあたしと同じお酒を注文し始めた。



長く美しい黒髪。



細く長身なその身体に黒のワンピースがよく似合っている。



「圭、久しぶり」



彼女はお酒を受け取ると、あたしの耳元で嬉しそうにそう言った。


「直美…久しぶりね」




あたしもそう返すと2人で乾杯し
お酒を流し込んだ。



直美はあたしの幼馴染みであり、姉妹のような存在だった。



昔は毎日のように遊んでいたのだけれど
2人して高校を1年で中退し、社会に出てからは予定が合わず自然と会う機会が減っていった。


高校を辞めてからの直美は仕事に追われ
かなり多忙な毎日を送っているようだった。


あたしは社会に出るのと同時に家を出たのだが
当時付き合っていた彼氏とすぐに同棲を始め
そして1年後にその彼と結婚をした。



けれどちょうど3ヶ月前、あたしの結婚生活は
たったの2ヶ月足らずで幕を閉じた。


18歳にしてあたしはバツイチとなったのだ。


離婚してからも何かと忙しく気を病んでいたあたしだけれど、最近になりようやく落ち着きを取り戻しこうして久しぶりに直美と会うことになったのだ。