まだ朝の7時前だというのに駅のホームは人で溢れかえっていた。
今日という日が始まったばかりなのに
その人々はまるで「時間がない」と言うように慌ただしそうにしていた。
階段をかけ降りてゆく者。
急ぎ足で改札を抜けてゆく者。
そんな人達の波に逆らうかのように
あたしは電車に乗り込んだ。
車内には黒のスーツや紺色の制服に身を包んだ中年男性や、学生達がほとんどを占めていた。
みんなお世辞にも明るい顔と言えないような表情でただ電車が発車されるのを待っていた。
お葬式かと思わせるようなその空間に
あたしが着ている真っ赤なコートはあまりにも悪目立ちをしてしまい何故だか自分でも場違いな気がしてしまった。
幸いにも発車までまだ少し時間があるようで
所々席が空いてたのであたしはそそくさと端の席へと腰を下ろす。
お酒の抜けきらない重い体を座席に預け
ようやく安堵の息を漏らす。
「扉が締まります、ご注意ください」
車内にアナウンスが流れたかと思うと
扉はゆっくりと閉じられ電車は走り出した。
丸一日寝ずに活動していた体はお酒が入っている事も手伝ってかなりの眠気を帯びていた。
市内から地元へ帰るには40分程電車に揺られなければいけないので、その少しの間眠りにつこうと瞼を閉じる。
