扉の開く音に気付いたのか、奥の部屋から直美がひょっこりと顔を出す。
「おかえり」
別にあたしの家ではないのだけれど直美はそう言って出迎えてくれた。
「ただいま」
玄関にヒールを脱ぎ捨てると遠慮する事もなくズカズカと上がり込む。
部屋の中には必要最低限の物しかなく、綺麗に片付けられていた。
あたしが一人暮らしをしていた時の部屋と比べると天と地ほどの差があるように感じる。
「はい、あんたが好きなの」
自分の家のようにソファでくつろいでいると、
直美はあたしの大好きなキャラメルラテを出してくれた。
もちろん、本格的なものではなくインスタントだが。
「ありがとう。
いただきまーす」
温かいキャラメルラテが冷えきったあたしの体に染み渡る。
けれど猫舌なあたしは舌を火傷したのは言うまでもない。
「よく何号室かまで覚えてたね」
直美は自分の分のキャラメルラテを片手にあたしの隣に腰を降ろす。
彼女の香水の匂いとキャラメルラテの香りがふわりと鼻をくすぐる。
