脱衣所に脱ぎ捨てられている服をかき集め、
あたしは帰り支度を始める。
彼はまだまだ起きる様子はない。
そう言えば彼の名前は何なのだろうか。
クラブを出て、ホテルへと向かう途中で聞いたはずなのだけれど忘れてしまった。
「結局あたしも彼の事、その程度にしか見てないんだな…」
洗面台の鏡に映る自分に向かって嘲笑いながら中指を立ててやった。
あたしは着ていたバスローブを脱ぎ捨て、
自分の服に着替えるとまるで逃げるかのように急ぎ足で部屋を後にした。
外はまだ薄暗く、髪を揺らす風は冷たく痛い程だった。
携帯で時間を確認すると既に6時を回っていた。
風のせいで乱れたマフラーを巻き直し足早に駅へと向かう。
なんだかこの街から一刻も早く抜け出したい気持ちでいっぱいだった。
