「マルちゃんは、ヒサが他の女子と話すようになったこと、よかったと思ってるんだ?」



松原先輩が机に頬杖をつきながら、私を見る。


彼の言葉を頭の中で繰り返してから、ゆっくりと頷いた。これは本心だ。




「……少しくらい、私以外にも目を向けて欲しいんですよ」




汐見先輩には、『好きなもの』が少ない。


『読書』と『静かな空間』と『狭い場所』。


あと『私』。


それが彼のお気に入りだ。それだけだ。


彼には趣味がないと判明した十二月、さすがにやべえと思って、汐見先輩の興味調査を開始した。


その中で見つけた『読書』は、彼の数少ない趣味のひとつだ。