失った愛を



疑わしげな目を向けるあたしに、


『ふぅ、それじゃあ…』


と言って部屋の中をきょろきょろと見回し、


『ん〜、あ、あったあった。

これ、消していい?』


そう言って指さしたのは、
真っ赤な絨毯についた、コーヒーのシミ。


「別にいいけど…」

すると、男がそれに手をあて、
ぼそぼそと何かを呟いた。


そして、

『はいどうぞ。』


にこっと笑う男の手元をみると、


「…消えてる。」



シミはすっかり消え、赤い絨毯は
鮮やかな紅をはなっていた。