「芽衣!」

大きな声でそう言うと、直哉と京介があたしをパッと見て大笑いした。

「ちょ…直」

アタフタしすぎて言葉を上手く話せない。

今のあたしは最上級の馬鹿を連発してるはず…。

恥かしい。

「中野!早く席に着け」

我に返って、教卓を見ると数学の男の先生があたしをすごい形相で見ている。

「すみませ…」

肩を窄ませて、あたしは大人しく席に着いた。隣では芽衣が少し離れた席で直哉と京介が俯いて肩を震わせている。

絶対、笑ってる!
元はと言えば芽衣のせいだし…。

数学の時間、話を全然聞かずに膝の上に携帯を隠して芽衣とひたすらメールを打っている。

送信:芽衣
《さっきは芽衣のせいだから》

受信:芽衣
《大声出すからでしょ》

送信:芽衣
《いらないこと言うからだよ》

受信:芽衣
《実は原くん好きでしょう?》

な…ッ!
なによ…芽衣の奴!

右手で強く携帯を握り締めて芽衣をチラッと見ると、いかにも美少女っぽいウインクをパチッとしてきた。