「楽しみねー」

芽衣はあたしの横腹を肘でくいくいとつついて、冷やかす。

「芽衣！」

冷やかされるのに慣れてないあたしは恥かしくて芽衣の名前を大きく叫んだ。

「お～怖い怖い」

ニヤニヤと笑いながら芽衣はあたしの肩を軽く叩く。

あたしが、はぁ、とため息を吐いたその時だった。

ガヤガヤと賑やか教室であたしの名前が確かに呼ばれた。

目の前にいた京介が声の主のもとへ足を歩ませる。

「京介、中野さんは？」

その光景をあたしと一緒に背を向けていた芽衣と直哉が見ているに違いない。

「あぁ…さちー。健」

今か今かと待っているあたしに京介は叫んだ。

「は、はーい。今行く」

くるりと向きを変えて京介の近くまで小走りで急いだ。