「俺、三谷さんのことが……好きです!」

「私は好きじゃないから」




下げていた頭を上げて呆然とする男子生徒に背を向けて、ひとりの美少女は立ち去って行った―――。




∵ ∴ ∵




「えぇえええ!?あんたまたフったの!?」

「うん。てかいつものことじゃん」

「や、まあそうなんだけどさ…あの早川くんを!?」

「へえ、早川っていうんだ」

「あんたまさか知らな……!?罪な女!!!」




ファストフード店で話す女子高生二人組。



叫んでいるのは私の友人、甲斐 実(かい くるみ)。

元気…っていうかうるさくて、クラスでも中心にいるようなコだ。

身長は平均くらいで、ロングヘアの髪を頭のてっぺんでおだんごにし、纏めている。
テニス部で程よく焼けた肌や笑っているときにできるえくぼがキュートである。


そして実と一緒に喋っている美少女……イコール私が三谷 ひめ(みたに ひめ)。
自分で言うのも躊躇しないほどの超☆美少女である。

色白でもちっとした肌に、血色がよく赤みがかった鴇色の頬、黒目がちの少し潤んでいるぱっちりした瞳。睫毛も長く、ぷっくりした唇も血色がよい。肩より少し上までの髪がボブっぽくセットされていて、ぱっつん前髪が童顔をさらに幼くさせている。小さな体は守りたくなることだろう。

その姿はまるで白雪姫、なあんてよく言われる。というか私もそう思う。

こんな美少女にだいたいの男は虜になり告白してくるんだけど、私の理想はだいぶ高いから、今のところ彼氏はひとりもできたことがない。
今日もひとりフったとこだ。




「私に見合うレベルの男、出てこないかなあ」

「ほんっとひめって性格が残念だよね…。それさえ許されるカオなのが羨ましいわ…」

「まずこんな美少女をナマで見れることに感謝するべきじゃない?」




呆れる実をよそに、私は優雅にミルクティーを飲んでいた。